◎参加者:T(L・記録)、Sさん
10/10(金)晴
18:24 新幹線東京発
20:44 土合駅着
21:15 指導センター
22:30 就寝
10/11(土)晴
4:00 起床
4:35 出発
5:25 一ノ倉沢出合出発
5:35 一ノ沢出合
8:40 25m大滝着
14:10 シンセンのコル着
16:15 オキの耳着
18:10 天神平スキー場
19:05 指導センター
東尾根は無雪期はシンセン沢からアプローチするのが通常のようだが、雪山の偵察も兼ね一ノ倉沢側から一ノ沢を詰める計画とした。
定時で退社し、いつもの新幹線「あさま541号」に駆け込む。「MAXたにがわ」だと気分も盛り上がるのだが。一番良いのは上野から上越線の駅を覚えながら揺られていくことだろうか。
指導センターには一番乗りだったが、深夜に目を覚ますと車で来た人達も含め20人くらい寝ていた。
翌朝、3時起床4時15分出発の学生パーティーのおかげで寝過ごすことなく月明かりの中を出発する。
先を争うようなルートではないので、のんびり歩いていると、後続パーティーにあっというまに追いつかれ、突然背後暗闇から挨拶かわりの「今日はどこ登るの?」の質問。「一ノ沢です」と答えると、急にペースを落とし「激渋だな。(一ノ倉はずいぶん登ったが)一ノ沢は登ったことがない。東尾根もないが、一度行ってみたいな」と講評をもらう。
出合にはテントはなかったが3組ほど準備中。十七夜の月が烏帽子左に沈んでゆく。ギアをセットし入渓。
一ノ沢出合からは、直ぐにでも登れそうなところに東尾根第二岩峰が見上げられる。紅葉見物には少し早かったが、振り返ると黄色く色づいた一ノ倉尾根に朝陽が当たって暖かそうだ。北面の一ノ沢は真っ暗で、足を止めるとすぐに冷えてくる。
ここ3日ほど秋晴れが続き、ゴーロの中に乾いて登りやすい滝・滑・樋が続くが、時間もあるし慎重にロープを出す。登った後やはりロープ出してよかったと頷き合う。
25m大滝は二段重ねCSに腐って黒ずんだロープが垂れ下がっているが、茶色い水苔が濡れて不快そうなので、左のクラックから巻く。
大滝まで特に難しいところもなく快適な沢登りだったので、その勢いでアプローチシューズで挑んだ私はクラックにカムをセットしたところで足が滑ってしまい敗退。計画書とおりクライミングシューズを持ってきてくれたSさんに選手交代するが、クラックを越えた後のトラバースに時間がかかる。結局、ギア切れしたところで確保してもらうが、ロープが動かないので、フィックスして登る。トラバースでロープに頼れず泣きそうなほど悪い。Sさんのクライミング能力に感謝したい悪場だった。結局、懸垂も含め、この25m大滝の通過に2時間近くかかってしまった。
先を急ぐが、その後も濡れたCS滝が連発し、カム・ナッツを手がかりにスリリングなバランスで越えてゆく。3つ目か4つ目で嫌気がさして右のスラブを高巻いてみたが、50mロープいっぱいで2本しか支点が取れなかった。
その後は傾斜が落ちてきた右の草付スラブを登るが、草付き初体験のSさんのためロープいっぱいまで登って、潅木を掴まえて確保を2ピッチ。最後は二股を左に入って笹薮を漕いでシンセンのコルを目指す。ようやく日が当たってきて太陽の光が暖かい。
12時までにコルに着かなければ、マチガ沢へ懸垂下降する計画だったが、コル到着は14時過ぎ。しかしここまで来て登らずに帰れるものか。Sさんは「明日は御岳に忍者返しを落としに行きたいので今日中に帰りたい」と言っているが、「捨て縄を使い切った」・「50mロープ1本しかない」・「シンセン沢の崖が思いのほか立っていて高い」と半確信犯の冷静さで説得し、ビバーク覚悟で東尾根を登りだす。
傾斜が緩いのでロープは出さなかったが、絶対に滑れない。あっという間に国境稜線に陽が沈み風が強くなり気が焦る。
観倉台先の水平リッヂをリップをつかんでへっぴり腰でトラバースしてきたSさんが第一岩峰直上ルートを見て、「捲きましょう」・「お助けスリング出しましょう」とか、とても明日忍者返しにチャレンジする人間とは思えないセリフを呟いている。無視して、残置スリングを引っ掴んでハング気味の凹角を乗り越す。
オキの耳直下の岩場は右へ巻く踏跡を途中でショートカットして狙い通り山頂に飛び出す。緊張から解放された安堵で息が上がり、しばらく激しく喘いでしまう。遅れて上がってきたSさんも何が起こったか分からないような顔をして万太郎谷から湧き上がる雲海と夕陽を見ている。
肩の小屋で日が暮れ、もう水上行き最終電車には間に合わない。天神尾根からスキー場の林道経由で星空を眺めながらのんびり下山した。