2018年8月4~5日@黄連谷右俣


◎参加者:高山(L)、本多(記録)2018-08-04-12-00-00-large

8/4~5に1泊2日で尾白川流域の黄蓮谷右俣に行った。
黄蓮谷右俣は甲斐駒ケ岳山頂へ直接突き上げる長大な谷であり、2泊3日で行くパーティも多いようだ。

今回の我々の計画は、1日目に奥千丈滝上のテン場まで行く予定のため、それなりの体力を要し、またルートミス等での時間浪費を極力無くさねばならない。

前日は、仕事を早めに切り上げ体力を温存する予定だったが、体力を使う作業が突発的に次々と舞い込み、疲労困憊してしまい若干不安になる。

■8/4(土)

6:20 竹宇駒ケ岳神社に集合し車一台デポ。日向山登山道入り口に移動。
6:45 林道を歩き始める。

林道トンネル

林道トンネル

途中で2人組と5人パーティーを追い越す。彼らの目的地が黄蓮谷なのか尾白川本谷なのかは不明。

8:00 林道終点に到着。

入渓すると直ぐに大きな淵を持つ簡単な滝が幾つか現れる。女夫滝等のナメ滝である。花崗岩と南アルプスの天然水で形成された非常に綺麗な谷だ。

やがて左岸から鞍掛沢が出合う辺りで、先行していた釣り師を抜かす。
「黄蓮谷にイワナはいるのかな?」と思うが、その後の遡行中に度々大きなイワナを見たため、それなりの数のイワナがいるようだ。

下部の河原

下部の河原

やがて淵に浸かり取り付く必要がある滝(遠見滝)が出てくると、高山さんが泳いで右から岬状の張り出しを越えて取り付き登る。
泳ぎが苦手な私は取り付きのためロープをもらい登る。

それまでは身体も頭も重くて仕方がなかったが、この滝を登ったのを契機に頭がスッキリしてくる。
その後に4メートル、3メートル、12メートル(大釜ノ滝)の3段滝が出てくる。
高山さんが空身になり挑戦。
1段目を左から右に瀑芯を裏越しして登る。2段目は淵の中の足場から助走をつけてガバに飛びつき、スメアリングとマントルで立ち上がるが、その先で良いスタンスがない。フォローも上がってショルダーすれば落ち口近くのポケットホールドに届いてクリアできそうだが・・・後ろから追いついてきた釣り師の引き攣った笑顔を見て、断念する。

なお、遠見滝も大釜ノ滝も遡行図上では巻くことになっている。
黄蓮谷の滝は花崗岩独特の難しい滝も多く、それなりに苦労するものが多い。
そのため巻きを選ぶ方も多く、巻き道は良く踏まれ分かり易いものが多い。
場所によってはトラロープが掛けられ登山道のようになっている場所も有り、谷のレベルを落としている箇所もある気がする。
黄蓮谷は滝を登るか登らないか、巻きでトラロープを使うか使わないかで時間や難易度・楽しさが大きく変わる谷だと思う。

11:00頃に噴水滝に到着。

噴水ノ滝

噴水ノ滝

噴水滝から尾白川本谷との出合は近いのかと思って進むが、意外に時間がかかる。

尾白川本谷を分け、1本目の7m斜瀑でも、高山さんが右をヘツり最後は滝壺に飛び込んで滝芯に取り付く。1歩上がって何とか突っ張り体勢に持ち込むが、水流中の左足がツルツルで、3回釜に滑り落ちて諦める。
しばらくすると千丈滝が登場。

千丈ノ滝

千丈ノ滝

3段(4段?)100m程度の素晴らしいナメ滝だ。

登攀ルートを確認し、右岸から登る。
1段目と2段目は傾斜が緩く簡単でノーロープで進む。
3段目で傾斜が急となるためロープを出す。
高山さんリードで開始し途中まで進みピッチを切る。(3段目と4段目の間か?)
そのままつるべで私がリードし灌木や草付きでランニングを取りながら落口まで。
スラブに苔や泥が乗っており若干嫌な感じだった。

この時、落口の細い灌木を使った折り返しビレーをしたが、体重差を考えると流動分散の半マストとした方が良かったかと後から思った。
この時11:00くらい。

千丈滝上ですぐに五丈沢出合いを越えて大きな釜を持つ15m滝に出くわす。
私が空身になり挑戦。
中間支点は取らないが、荷上げと落ちた時に引き寄せてもらうためにロープを曳いていく。
流心裏と右が大きく抉れているため、左岸滝裏から取り付き流心に近づく。
落ち口下の大ガバを両手で掴み足を浮かせ流心左へ。
シャワーで何も見えないが大きなスタンスがあり、左足を上げ突破。

12:00頃に坊主ノ滝に到着。

高山さんが登攀ラインを探り始める。
「えー、これも登る!?」と内心思いながらラインを考えてみる。右から上がって、中段の割れ目をトラバースして水流を渡り、左の草付きあたりから落ち口の丸いスラブを越えれそうだという高山さんの説明で不可能でも無いのかもなあ?などと思えてくるが、時間は既に11:45くらい。
何しろ長い沢なので時間的にも無理だろうからと右のガレから巻く。

坊主ノ滝の巻きで本流に戻る手前で崖状箇所に辿り着く。
高山さんが大きな岩を抱えてクライムダウンし始めた時に岩が外れ、一時片手だけで足ブラとなる。
そのままトラバースし事なきを得るが結構焦った。
その様子を見ていたので、適当な灌木を使い短い懸垂で降りる。

坊主ノ滝のすぐ上で綺麗にナメた15mスラブ滝が登場。右の草付ルンゼから登ろうとするが、高山さんがラインが汚いと言ってスラブの直登を主張する。
高山さんが一段上がったところにハーケンを浅打ちする。
ロープを出して私がリードしてみようと登ってみるが、難しそうな予感がしてすぐに止める。
高山さんがチャレンジ。
ハーケンの上の小さい割れ目にカム0.3を決め、そのまま登っていく。
フォローのためにロープを降ろしてもらうがうまく届かないので、全長20m位あるようだ。
登った感想は5.10台のスラブという感じだが、墜ちれば簡単に飛びそうなプロテクションとゴム沢靴では怖いし難しい。
高山さんは良く登ったなあと感心する。

13:15頃に奥千丈滝下に到着。

二俣先

二俣先

何しろ長い。
奥千丈の滝は特に難しいところはない。
最後の方にハーケンが幾つか打ってある箇所があった。

14:45頃に2400m付近テント場着。

遠く野辺山方面まで見渡せる、やや狭いが真っ平な絶好のテン場だ。本流右岸をちょっとだけ上がった箇所にあり、焚火跡があるため見つけやすいと思う。

空腹のため先に夕飯を食べる。
麻婆春雨丼・海藻サラダ・わかめスープの豪華な夕食だ。
うまい。
食材を担ぎ作ってくれた高山さんに感謝する。

奥千丈滝上部 テン場

奥千丈滝上部 テン場

その後にタープを張り焚火を開始しようとした矢先に夕立に見舞われる。
夕立をタープでやり過ごした後に、びしょ濡れの薪に着火。
見事に火が付き焚火を囲み軽い酒盛りを開始。21:30に就寝する。

標高が高いため寒さを心配していたが、ISUKAの10℃対応シュラフとシュラフカバーで全く寒くなかった。

■8/5(日)

5:00に起床し棒ラーメンの朝食を食べる。

朝陽

朝陽

朝日が素晴らしい。
コーヒーを飲み6:15に出発。

奥三段の滝などに幾つかハーケンを打ってある箇所もあったが、全てノーロープで通過。

草原状の明るい斜面などもあり楽しい気分でいるなか、ふと初めてバリエーションルートに行ったのが鋸岳~甲斐駒縦走であったのを思い出し、昔を回想しながら歩いたりした。

ガレの向こうに八ヶ岳

ガレの向こうに八ヶ岳

詰めの最後辺りで高山さんが野生のブルーベリーを発見し、少々摘まむ。
実が黒豆大であることから「クロマメノキ」と呼ばれていると教えて頂く。

クロマメノキ

クロマメノキ

8:30頃に甲斐駒直下の登山道に到着、そのままピークを踏む。
甲斐駒の山頂は多くの登山者で賑わっていた。

9:00に下山を開始。
黄蓮谷も長かったが黒戸尾根も同様に長くかなり疲れる。

甲斐駒山頂

甲斐駒山頂

途中、京葉山の会の元会員で室堂の環境レンジャーをやっていたK女史と偶然再会し、奥多摩で結婚する予定であるとの話を聞く。
おめでとうございます。

12:30竹宇駒ケ岳神社到着。

黄蓮谷は非常に良い沢だった。
白い花崗岩の渓相が非常に綺麗であること・長大でありながら泳ぎ・シャワー・直登・高巻が弛むことなく連続し変化に富んでいること、とにかく何でも規模が大きいことなど、幾つもあげることができると思う。

※高山追記
ガイドブック「関東周辺の沢」や最近出版された「東北・上信越・日本アルプス 沢登り銘渓62選」ですと、黒戸尾根を五丈小屋まで登ってから、踏み跡を下降して、千丈ノ滝上から入渓となっています。しかし尾白川本谷出合までの非常に広く白く明るい渓相を楽しむことができませんし、泳ぎやシャワークライミングといった黄連谷の楽しい部分をショートカットしてしまいます。また標高差で450m近くも無駄に登ることになりますので、お勧めしません。
なお今回は水量が少なかったため下部の滝を積極的に直登しましたが、通常水位では難しいと思います。

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