2019年3月23日-24日@白毛門・笠ヶ岳


@参加者:上林(L、記録)、花村、土川

3月22日(金)
21時 東京駅南口で 花村さんの車に拾ってもらい水上へ。水上に到着すると、既に軽く雪が舞っていてびっくり。
水上の道の駅で 軽く前夜祭をしながら、行程について相談。ルンルン春山のつもりで馬蹄形縦走を計画したのだが、強い冬型になる予報に変わってしまった。
翌日から悪天が予想されるために、馬蹄形縦走は諦めて 笠ヶ岳の避難小屋で泊まって、ピストンするルートに変更する事にした。

3月23日(土)
9:15 土合駅 — 12:20 松ノ木沢ノ頭 — 13:35 白毛門 — 15:00  笠ヶ岳避難小屋

当初 馬蹄形縦走のために 上林、花村は前泊して先行する予定だったが、朝 電車で到着する土川君と 土合駅で合流してから出発。
登山口から早々と雪があり、しばらく登ると雪面が硬くなってきたので早めにアイゼンを装着した。空はどんより曇り空で、左手の谷川連峰の上部はガスの中。
しばらくすると谷川連峰の上部は完全に雲に覆われてしまった。花村さんのピッチが上がらず かなりののんびりペースで登っていく。
久しぶりに泊まりの荷物を背負っての白毛門の急登は長くて堪える。松ノ木沢ノ頭では雪を切り出してイグルーを作っているパーティーがいた。
頂上直下の最後の急登も こんなに長かったかなと思いながら、白毛門の山頂に到着。はっきり言って時間かかり過ぎだ。

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この時点では まだそこそこ視界はあり、風もそれほど強くなかった。
笠ヶ岳まで行くか 引き返すか しばし議論したが。心配事は翌日の悪天と 笠ヶ岳の避難小屋に先客が居て泊まれない事だ。
ここで、途中で抜かれた単独の登山者が降りてきて、笠ヶ岳の小屋には誰も居なかったとの事。
白毛門の山頂から笠ヶ岳までのコースタイムは 1時間程度で、今からこの荷物を背負ったまま 元来た道を下山するのも結構大変なので、明日は何とかなるだろうと腹をくくり、予定通り笠ヶ岳に行く事にする。一旦少し下った後の 笠ヶ岳までの最後の急斜面が意外と長く、風も急に強くなってきた。なんとか強風の笠ヶ岳の山頂に到着して、写真も撮らずに少し下った避難小屋に到着。

ほっと一息と思いきや、ここからが苦難の始まり。小屋の扉は10cmほど開いていたが、押してもぴくりとも動かない。中を覗くと小屋の中は隙間から吹き込んだ雪が大量に積もっているようだった。ここまで来て小屋に入れないのは死活問題なので、なんとか右腕を隙間から入れてピッケルで扉の裏の雪を少しずつ崩して掻き出し始めた。扉の裏の雪は完全に氷結しており ほんの少しずつしか崩せない。強風の中 腕が鉄板の扉と小屋本体に打ち付けられる痛みに耐えながら 根気よく氷を崩していき、ピッケルの届く範囲をほぼ全て掻き出したが 相変わらず扉は少ししか動かない。次に持参したチタン製のスコップ入れて同じ作業を続ける。スコップがチタン製で良かった。アルミ製だと歯が立たないだろう。16時タイムリミットにして16時までに小屋に入れ中なかったら、行動できるうちに下れるだけ下ろうと心の中で決めて ひたすら氷を掻き出す。40分以上かけてスコップの届く範囲の氷と雪を全てを掻き出したが扉は 上部が最初より10cm程度開くようになっただけだった。ここで土川君が 隙間から入ってみると言うので 無理やり体を入れてもらったら、なんと小屋の中に倒れこむようにして入る事ができた。スコップを渡して内側の氷を掻き出してもらい、扉が開いて入れた時 思わず2人で手を取り合って喜んでしまった。その後 3人で小屋の中の大量の雪と氷を掻き出せるだけ掻き出して 3人分の寝るスペースを作り、マットを敷いて ようやく一息。
久しぶりに身の危険を感じた1時間だった。
ダウンを着込んだりして落ち着いた時には 17時前で すぐに夕食の鍋を作り始めた。肉いっぱいの暖かいキムチ鍋を食べても冷え切った体が温まらず、ガタガタ震える始末。
ここで、持参した2~3人用のツェルトを張ってみる事にする。何とか両隅を小屋の上部に結んで 雪を掻き出したスペース全体をツェルトで囲んでコンロを炊くと うそのように暖かくなった。ペラペラのツェルトの威力に感謝! 一人用のツェルとだと こうはいかない。
寒くなると弱火でコンロを炊きながら のんびり酒を飲み 楽しいひと時を過ごす。外は到着した時よりさらに風が強く吹き荒れて時折 凄い音がする。
21時頃 寝る前に一度外に出たが、その時は風が収まっていて、なんと星が数個見えた。翌日も 大荒れにならないように祈ったが この願いは見事に裏切られる事になる。就寝した時は外も静かで寒さを感じなかったが、夜中2時を過ぎた頃から 再び外で強風が吹き荒れる音で頻繁に目が覚めた。

3月24日(日)

8:20 笠ヶ岳避難小屋 — 10:00 白毛門岳 — 13:55 白毛門登山口

6時起床。外は相変わらず時々強風が吹き荒れる音がしている。外に出ると真っ白で視界が悪い。昨晩の鍋の残りで作った雑炊+ラーメンで朝食。風が落ち着いた時間もあったが、しばらくすると また強風が吹き荒れる音がするので、待っていても風は止まないと判断して出発することにする。小屋を出て山頂に向かって登り始めたが、頂上手前で強風にあおられしばらく動けなくなる。少し風が弱まった隙に山頂経由で下山開始。強風で雪が飛ばされた夏道を少し下ると昨晩積もった雪で下りラッセル状態。

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降雪とガスで視界が悪いので、常にメンバー同士が見える範囲で行動するよう徹底した。
下っていくと尾根状になるはずなのに沢状の地形になったので、スマホのGPSで現在位置を確認すると少し東側にずれている事が判って軌道修正。その後は忠実に尾根をたどって白毛門へ戻る。白毛門までは昨晩積もった雪で 脛から膝上までのラッセル。土川君が嬉々として先頭でラッセルしてくれる。白毛門山頂からの岩場や急斜面をクライムダウンして、頂上直下の急斜面の基部に到着。ここからは広い急斜面を下るのだが完全にホワイトアウト状態で、右手の少し斜度がゆるく潅木が生えているルートに引き込まれてしまう。しばらく下ったところで様子がおかしい事に気がつき、GPSで現在位置を確認すると南西側に伸びる支尾根を下っている事が判った。コンパスで方向を確認すれば一目で判るルートの間違いだが、ここまで方向を確認せずに下って大失敗だ。登り返してGPSを見ながらしばらく右往左往するが何とか正しい尾根にたどり着き、ラッセルしながら下ってい行く。

登りの途中にあった尾根上の大きな岩を迂回する所に着いて、ようやくルートが100%正しい事を確信し無事に戻れる気がした。その後もラッセルしながら下るが、途中から雪が少なくなって木の根や岩が出てきて アイゼンが引っかかってとても歩きにくくなる。

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何度か木の根につまづいて転んだりしながらも高度を落とし、最後の急斜面は尻セードで遊びながら降りて ようやく登山口に到着。本当に無事生還という気分だった。
土合の駅でパッキングして、車に積もった雪を払って、水上の温泉「鈴森の湯」に移動して温泉に浸かる。まさに天国!
下界の建物の屋根にも雪が積もっており、真冬に逆戻りの濃い2日間だった。
帰宅したら 強風に叩かれ続けた顔の一部が軽い凍傷になっており、右腕はあざだらけだった。
いろいろあったが、忘れられない山行の一つになりそうだ。

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